熱伝導 計算例

熱伝導

熱伝導のポイントは次の二つです。

  • 熱伝導はエネルギーの大きいところから小さいところへ熱が伝わること
  • 熱伝導の伝熱量はフーリエの法則 \(Q = λ×\frac{T_1-T_2}{x} × A\)で表せる。


では、簡単な例を見てみましょう。


目次

フーリエの法則を用いた伝熱量の計算


平板の熱伝導を考えます。実際には多方向に熱が伝わりますが、ここでは簡単に考えるため放熱はなく、
1方向での熱伝導を考えます。


平板の面積がA=1[\(m^2\)]で、厚さがx=0.1[m]だとします。そして平板の左側の温度が\(T_1\)=320[K]、
右側の温度が\(T_2\)=300[K]、熱伝導率λ=10[W/m・K]とすると、
伝熱量Qはフーリエの法則から、

\(Q = λ×\frac{T_1-T_2}{x} × A
= 10 × \frac{320-300}{0.1} × 1 = 2000[W]\)
と求められます。

平板を厚くすると



次に、平板の厚さを0.1mから0.2mにした例を考えてみましょう。
他の値は上の例と同じとします。




同様に伝熱量を求めると
\(Q = λ×\frac{T_1-T_2}{x} × A
= 10 × \frac{320-300}{0.2} × 1 = 1000[W]\)
と求められます。

平板の厚さが2倍になると伝熱量は半分になりました。
このことから、熱伝導では物体は厚くすると熱を伝えにくくなり、薄くすると熱を伝えやすくなると言えます。



平板の面積を大きくすると



次に、平板の面積を\(1m^2\)から\(2m^2\)にした例を考えてみましょう。
他の値はの最初の例と同じとします。


\(Q = λ×\frac{T_1-T_2}{x} × A
= 10 × \frac{320-300}{0.1} × 2 = 4000[W]\)
と求められます。

平板の面積が2倍になると伝熱量は2倍になりました。
このことから、熱伝導では物体は面積が大きくなると熱を伝えやすくなり、小さくなると熱を伝えにくくなると言えます。

熱伝導では
・物体は厚くなると熱を伝えにくくなり、薄くなると熱を伝えやすくなる
・物体は面積が大きくなると熱を伝えやすくなり、小さくなると熱を伝えにくくなる

設計時には上のようにどのパラメータを変えたらどのように伝熱量が変わるかのイメージを掴むように
してください。この感覚を養うことで計算せずに伝熱量の見積もりができるようになり、効率的です。



三層平板の場合



平板が3枚重なった三層平板を最後に考えてみましょう。

三層のような多層に重なった多層平板の伝熱量Qは定常熱伝導の場合、次の式で求められます。

\(\displaystyle Q = \frac{T_1-T_2}{\frac{x_1}{λ_1}+\frac{x_2}{λ_2}+\frac{x_3}{λ_3} }× A\)

分母の項数が平板の枚数と同じになります。\(λ_1、λ_2、λ_3\)はそれぞれの平板の熱伝導率です。


ここで、下の図のような例を考えます。



伝熱量は\(\displaystyle Q = \frac{T_1-T_2}{\frac{x_1}{λ_1}+\frac{x_2}{λ_2}+\frac{x_3}{λ_3} }× A
= \frac{300-280}{\frac{1}{30}+\frac{1}{40}+\frac{1}{50} }× 2
≒510.6[W]\)

最初は伝熱のイメージを掴むの難しいかもしれませんが、まずはイメージを掴めるように慣れてください。



今回考えたのは熱伝導の基本的なことなので、興味ある方はさらに複雑な熱伝導について調べてみてください。

まとめ
  • 熱伝導はエネルギーの大きいところから小さいところへ熱が伝わること
  • 熱伝導の伝熱量はフーリエの法則で表せる。 \(Q = λ×\frac{T_1-T_2}{x} × A\)
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